第三章 桃花島
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第三章 桃花島
桃花の仙島
無剣:噂通りのところだな~、
まるで仙界みたいだ。
緑:さすが桃花島。いい景色だ!
金鈴:綺麗だけど、でもここは僕の居場所じゃない……
無剣:ん?
金鈴何か言った?
金鈴:なんでもないよ。
突然、騒がしい音が聞こえてきた。
倚天:誰かが、魍魎に囲まれているようだ。
屠龍:魍魎か!
待ってたぜ!
??:…………
??:外の人がどうやってこの島に…?
もしかして、その人たちも貴方のお仲間ですか?
????:目障りなやつらめ…
??:仲間ではない…
だとしたら、一体何者なんだ?いとも簡単に島の結界を破るとは…
屠龍:何者だ?
助太刀してやろうか?
魍魎:ゴゴゴゴゴゴオォォ!
無言の別れ
無剣:もういないみたいですね。
緑:なに?
もう行ったのか?
感謝の言葉ぐらい残して欲しいもんだな。
桃林の迷陣
もう四回は通ったよ。
無剣:確かに……
見たことのある景色ばっかり……
金鈴:左に曲がれば、
またさっきの場所に戻ってしまうね。
緑:マジで!?
どこも同じような桃の木だらけ…
目がグルグル回ってきたぞ…
突然、地面が大きく揺れ始めた。
無剣:っひゃ!
緑:気をつけて!
俺から離れんなよ!
緑:ここの地脈、あんまり穏やかじゃないな。
まさかここも崑崙山と同じ……?
倚天:だとすると、
早くここから抜け出さなくては。
屠龍:分かれ道がこれだけあるのに、
元の場所に戻ってきてしまうのはどうしてなんだ。
緑:さっきから金鈴っちがずっと桃の木を見ているんだけど、
何か見つけたか?
金鈴:ここらの桃の木は『八陣図』の八卦の形に植えられている……
おそらく、僕たちはもう陣の中に閉じ込められてしまったのだ。
魍魎:ゴゴゴゴゴゴオォォ!
屠龍:どうやら閉じ込められているのは俺達だけじゃないようだな!
ちょうどいい、刀の錆にしてくれる!
妖しい簫声
倚天は何かに気付いたようで、突然立ち止まって、振り向いた。
倚天:簫の音が。
金鈴は耳を傾け、僅かな簫の音に集中している。
無剣:何かわかった?
金鈴は小さく頷いて歩き出した。私たちも急いでついていき、花の森を通り抜けた。
林中の少年
倚天:ここはまだ陣の中だろう。
今夜はここで野宿するしかない。
篝火のそばで熟睡するみんなの姿を見て、少しほっとした。
でも……また一人足りないような……
篝火からそう遠くないところに、一人で座っている金鈴を見つけた。
無剣:金鈴、なぜ一人でここに?
なにか考え事?
金鈴:君には関係ない。
突然、金鈴は近くにある樹を睨みつけた。
金鈴:何者だ!
姿を見せろ!
?????:うわー!普通いきなり攻撃とかしないよね?!
僕は分水蛾眉刺、この島の人っすよー!
無剣:安心してください、何もしないから。
私たち外の者なんだけど、森にうっかり迷い込んじゃって……
蛾眉:あんたたち島の外から来たんだったらちょーっと質問!
トラにあったことがあるっすか?
金鈴:トラ?
誰のこと?
無剣:お友達……?
もしその人が島の外にいるなら、島を出れば会えるんじゃない?
蛾眉:ずーっとずーっとこの島にいたから飽きちゃった。
ボクを外に連れて行ってくれないっすかね?
緑:もしこの陣から出るのを手伝ってくれれば、
島を出る方法を教えてやってもいいぞ。
蛾眉:へぇ、お前もいたんだ。
蛾眉は緑を一瞥すると、不機嫌そうに何かを呟き始めた。
蛾眉:今夜は満月、明るくっていいんすけど……
満月の夜は魍魎も特に多いんすよね…
あ、あとあんまり会いたくないやつも……
屠龍:こいつなにを言っているんだ?
倚天:魍魎が来た、と言ってる!
柳暗花明
島の人間だったら、
ここから出る方法を教えてほしい!
蛾眉はこちらに背を向け、無視するように森の奥へと消えた。
倚天:待つんだ。
倚天も森に入ってしまった。蛾眉と何かを話したのか、戻って来た時には彼一人だった。
屠龍:やつは?
倚天:我々は今、陣の真ん中にいる。
だからどう足掻いても元の場所に戻るようだ。
少なくとも迷子の心配はないが。
倚天:明日の朝、道を案内してくれるそうだ。
我々は今夜ここで待つことにしよう。
無剣:倚天さんってすごいですね。蛾眉と話せるんだ。
倚天:どういう意味だ?
緑:難しいというか、全然交われないというか……
さすがだぜ倚天さん。
静かな夜
でも微妙に違う気がする。
私は暗闇の中、休むことなく歩き続けている。
例え何があっても、ここの事は絶対に忘れてはいけない…
こんなにも懐かしいのだから……
ここに最も大事な記憶があるような気が何となくする。
そして最も大事な人も……
かつてここから逃げ出したものの、ここの全てが私の魂に刻みこまれている。
ここに最も大事な記憶があるような気が何となくする。
そして最も大事な人も……
かつてここから逃げ出したものの、ここの全てが私の魂に刻みこまれている。
あそこには、最も大事なものがある……
この圧迫感、そして恐怖の記憶……
思い出せないが、この感覚はまるで魂に刻まれているかのような気がする。
ひたすら、夢の中の神秘的な力に引き寄せられている。
あの場所に戻ったら、自分の存在意義を取り戻せるかもしれない……
たとえ離れようが、再び舞い戻る。この圧迫感、そして恐怖の記憶……
思い出せないが、この感覚はまるで魂に刻まれているかのような気がする。
ひたすら、夢の中の神秘的な力に引き寄せられている。
あの場所に戻ったら、自分の存在意義を取り戻せるかもしれない……
たとえ消え去ろうが、再び相まみえる。
──私の唯一の願いは、あなたの夢を叶えること。
──たとえ、すべてを失っても。
だから、絶対忘れない……
ズキズキと頭が痛む。夢から覚め、
夢の記憶は退潮のように消えてなくなった。
しばらくの間、私は恍惚としていて、自分がどこにいるのかわからなかった。
冷たい風が体に吹き抜け、冷えているのに気付いた。篝火はすでに消されていた。
金鈴:……目は覚めた?
周りを見ると、
少し離れているところには、金鈴がたったひとりで座っていた。
無剣:あれ?他のみんなは……?
金鈴:薪を探しに。
金鈴がプイっとそっぽを向く。なんか、かなり思い詰めているようだ。
無剣:金鈴は最近、何か思い詰めてるの?…何があったか教えてくれる?
金鈴:気のせいだ。
思い詰めることなど…ない。
私は何を言えば分からず、気まずい空気が流れる。時間が経つのがとても遅く感じる。
無剣:私……みんなを探しに行くわ。
その場から離れようとすると、金鈴も立ち上がって、私を止めようとした。
金鈴:森の中は魍魎がでるかもしれない。君だけじゃ…
無剣:安心して。
すぐ戻るから。
私は一人で森の中に入りると、夜風の音と共にかすかに何かが聞こえてきた。
????:俺たちが今までやってきたことは本当に正しかったのか?
???:杯を交わしてきた貴様と俺の仲だ、お前を騙したことがあったか?
???:まだ俺たちがやっていることに戸惑いがあるのか?
???:躊躇うな、
俺を信じろ。
俺達がしていることは全て、この世界を救う為だ!
???:どうやら、子鼠が俺達の話を盗み聞きしているようだ……
先に行け!
???:出て来い!
大人しく言うことを聞けば、
殺しはしない。
体が動かない…。やっと一歩下がれたと思ったら、人影はもうすぐ目の前まで来ていた。
???:お?貴様だったのか。
まさかこんなところで会うとはな……
無剣:あ……あなたは?
この人はどうやら私を知っているようだ。しかしいくら記憶の糸をたどっても、私はこの人の事を思い出せない。
緑:危ない!
早くこっちに!
???:まさか助っ人がいたとはな。フン、今日はここまでだな。
またな。
謎の男はその場を去った。
無剣:あの人……
私のこと、知ってる……
緑:早く戻ろう。
皆に心配させちゃうよ。
屠龍:勝手に出歩くな!
ここはお前らが考えてるほど安全な場所じゃない。
緑:そうだよ。一人で歩き回ったら、魍魎に捕まるかもしれないよ。
金鈴:君が魍魎の話を少しでも控えられたら、
もっと安全でいられるかもしれないな。
金鈴の指摘通り、魍魎が現れた。
翌日の朝、蛾眉は約束通り私たちを桃の森から連れ出した。
しかし、森を出た途端、昨日の魍魎に囲まれた青年に会った。
あの人は?!
紫薇:俺はただ、自分の物を取りに来ただけだ。
早々にこの場を離れるなら命までは取らん。
玉簫:貴方は、
この桃花島が誰でも自由に出入りできる場所とでも勘違いしていませんか?
玉簫:私を殺しても、
この陣があるかぎり、
桃花島から一歩も出られませんよ……
玉簫:この地脈の振動は津波の前兆……!?
一体何のためにこのようなことを……!?
無剣:たったひとりで、津波を……?
紫薇:そのくらいで驚くとは…
ではもっと面白いものを見せてやろう!
魍魎王:ゴゴゴゴゴゴオォォ!
玉簫:魍魎王!!!
貴方はもしやそれを待っていたと…!?
紫薇:お遊戯に付き合ってやってもいいが、
心魄の結晶を早く持ち帰えらないといけないんでな。
紫薇は魍魎王の心臓の位置に手を置いた。
そこで何かが浮かぶ’と、魍魎王が凄まじい悲鳴を上げた。
無剣:ちっ、お前は仲間に酷なことをしたな。あいつの心臓を無残にも取り出したなんて。
(彼の目には少しの同情も窺えないが、殺人鬼にも見えない。もしかして、魍魎王は彼の味方じゃないか?)
紫薇:残酷?
そいつらにとってはこれが本当の慈悲なんだよ!
玉簫:ははっ。あなたにとっての慈悲は、
かなり独特なものとお見受けする。
紫薇:捨てられたからこそ自分の価値を証明したい!
あぁ、お前らなんかにわかる訳ないだろうよ!
紫薇:万物には必ず死が訪れる。
こいつらは死ぬ、お前らも死ぬ、
勿論、俺もだ。
紫薇:あっさり死ぬより、
死の感覚をじっくり味わえる方がお得だろ?
紫薇:思う存分、ご堪能を……
屠龍:逃げるのか?そうはさせねえ!
紫薇去る
紫薇:生憎、心魄を持ち帰らないといけないんだ。
お前たちには絶望を教えてあげられないのが残念だ。
気が付くと、紫薇の姿は消えていた。
心臓が取られた魍魎王が狂ったように、島の中心へと走り出した。まだ死んでなかったのだ!
魍魎逃れ
倚天:斬る!
倚天の剣気で、魍魎王が吹き飛ばれる。
緑:どうやら逃げるつもりだな!
屠龍:逃がさねえぞ!
魂の結晶
魍魎王が長い咆哮を上げると、同時に引魂鏡も砕け散った。
緑:ふぅ……やっとやっつけた。
無剣:心臓が取られても死なず、
逆に狂うようになるのは、
どういう事なんでしょう?
倚天:狂っているように見えるが、衰弱は続いていた。
おそらく心魄の結晶が原因だな。
金鈴:引魂鏡以外にも、
気をつけるべきものが一つ増えたね。
屠龍:魍魎を殺せば引魂鏡が割れる。
それなら引魂鏡を割れば、魍魎も消えるのか?
倚天:この次に試してみるべきだろう。
屠龍:もうあいつらの好きにはさせねえぞ!
倚天:先手を打たなくては
不利になるかもしれん。
緑:とりあえず魍魎王も倒したし、外への道が開かれたかも。
ここから早く離れようか?
私たちが桃花島を離れる準備をしていると、玉簫と蛾眉が見送りに来た。
玉簫:皆様のおかげでこの島は平和を取り戻しました。なんとお礼を申し上げてよいのやら…
玉簫:今日をもって
桃花島はいつでもあなたたちを貴賓として歓迎いたしましょう。
いつかまた会える日まで、お元気で!
紫薇の思い
紫薇:捨てられたからこそ自分の価値を証明したい!
あぁ、お前らなんかにわかる訳ないだろうよ!
彼の目からは、絶望と怨恨が溢れてきた。
まるで別人のよう……彼……
私の知っている彼と……
私の知っている……彼?
私の知っている……彼?
本来の彼と……
本来の彼は……どんな様子だったか?
彼の過去を、私は……知らなければならない?本来の彼は……どんな様子だったか?
なんとなく……
何かがすぐ目の前にありながら濃霧に覆われているようで……
手を伸ばしても触れることができない‥ ‥
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